第四章 水溶液         (63回〜85回)

第四章 水溶液


67回 10月20日 硝酸カリウムの溶解度
68回 10月21日 硝酸カリウムの溶解度曲線
71回 10月24日 電気の力でパンを焼く(蒸しパン)
73回 10月29日 パラゾールの沸点は上がる
67回 10月20日 硝酸カリウムの溶解度
 
硝酸カリウム水溶液は沸点上昇があるせいか、直火で加熱溶解すると
100度以上まであがってしまってしまうので湯せんを使いました。
湯せん上では生徒は試験管をつけたままにして攪拌しないということを
発見しました。この実験では攪拌することで結晶を溶かすことが出来るので
攪拌するように指導すると今度は試験管を湯せん上でぐるぐる回し始めた。
攪拌一つとっても指導の難しさを感じました。そしてメインの再結晶とろ過、
ろ過については一学期に「でんぷんと食塩を分離する」や「わりばし乾留実験
で出来た炭を用いた吸着」などでやっているので手際よいが生徒の作業はここ
で止まりました。ろ過しているはずなのにろ液からも結晶が。そして再結晶し
てきた硝酸カリウムが多くて試験管からとれない。そしてここでチャイムが鳴
る。ろ液から出てきた結晶も再度ろ過してろ液をとる。さらに濾紙上のろ物の
中に硫酸銅が入っていないかどうか調べるためにろ物を一部純水に溶かしてろ
液とその溶かした液にアンモニア水を加えました。これは銅イオンが含まれて
いなければ錯イオンを作らない。ということを示すものだったのですが

授業が終わって
生徒の感想:そのときの生徒の反応は、深青色がきれい

これはチャイムが鳴ってしまってもここまでが区切りだからとやり続けたせい
かもしれませんが、生徒に実験結果を書かせたところ、再結晶した結晶の溶液
の色は「エメラルド」とかかれる始末。実験の感想は「青色がきれいだった」
だった。
 再結晶を起こした物質に関する生徒の評価よりも錯イオンに対する評価が大
きくなってしまって結構ショックを感じてしまいました。さらに今回の実験で
混合物を分ける方法は「ろ過」と書かれて(確かにそうなんだけど)結構
ショックだったりした。というわけで明日はこの実験のフォローをしなければ
と心に誓ったのでした。

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68回 10月21日 硝酸カリウムの溶解度曲線
硝酸カリウムの溶解度の表から溶解度曲線を作成するという
作業を行ったところ、ほとんどの生徒がグラフ用紙を目の前
にして止まってしまいました。つまり、座標軸が書いていな
いグラフ用紙上に自分で座標を書くことが出来ないのです。
またたとえ書いても座標軸に目盛りや単位が書いていなかっ
たりしました。

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71回 10月24日 電気の力でパンを焼く(蒸しパン)
 さて、今日は「溶解」の単元で「蒸しパンづくり」を行った
ので報告します。本校では毎年、いろんな人が必ず行っている
恒例のものと言うことで試行錯誤の歴史と絡めて紹介します。
 まず、本時の目標は
  「炭酸水素ナトリウム(電解質)により電流が流れること
      によってジュール熱が発生する事を確かめる。
   またその熱により炭酸水素ナトリウムが熱分解し二酸化
      炭素の発生することによってパンが焼けることを見る」
     というものです。
 授業の導入でこの反応を説明し、作業にかかりました。
 本校では味を追求するために、炭酸水素ナトリウムの熱分解によって生じた
炭酸ナトリウムの苦みを消すために前任者は砂糖を入れてきました。
  しかし、はかるものが多くなると生徒は混乱し(プリントを見ればいいのですが生徒はプリントを見ずに行動するから。またはかりも少ない)私はあえて、砂糖を抜きにしました。
 さらに前任者は溶媒をはかるのにメスシリンダーを使っていましたが生徒は
食べ物を扱うのにメスシリンダーを使うということに抵抗があるので、透明の
プラスチック計量カップを用意しました。

 その計量カップに全卵(M)1個を入れ、よくとく。(50ッcぐらいを指す)
 そこに市販牛乳を入れ、全量を100mlにする。
 これは、味を追求するために前任者から牛乳、卵を使っています。前任者は
それ以前行われていた水70ml、粉100g使っていたのをその水をただ牛
乳に切り替えていました。そのため、溶媒の量(といっても牛乳と卵の入った
ゾル溶液ですけど)が120mlとなり、溶媒量が多くうまく焼き上がらない
ことが多かった。
 この溶媒をよくまぜ、ミルクセーキにする。
 ステンレスボールにホットケーキミックス100gはかりとる。
 このホットケーキミックスにミルクセーキを少しずつ入れる。このとき、粉
を切るように入れ、決してかき混ぜない。
 これが一番、この実験でのポイントだと思います。毎年、この実験を行うの
ですが必ずと言っていいほど一クラスに一班か二班うまく焼き上がらない班が
出てきます。この班は電流を流すと最初1アンペアまであがるのですがそれ以
降あがらずだんだん電流値が下がり始め、2分ほどで反応が止まってしまうと
いうものです。もちろん焼き上がってはおらず、電極周辺にこびりつくだけで
した。
 
 なぜ出来ないのかについて今までいろんな試みがなされました。
まず、電流計が悪いのではないか。これに対しては新しい電流計を使い対処し
ました。
 次に、電極が悪いのではないかと電極をアルミ箔にしたりしましたがステン
レス板が一番安定と言うことでステンレス板を用い、ステンレス板を内側にそ
らしたり、先を細くさせたりしました。
 さらに入れ物の改良を考え、紙コップを使いましたが、紙コップではコップ
のロウが溶け出すということが起こったため、牛乳パックを使うことにしまし
た。(牛乳パックとステンレス板は密着させる)
 これらの改良を行ったにもかかわらず失敗が続いたので(9月に実施したと
きは9班中、成功班が2班しかなかった)これは、粉とミルクセーキを混ぜる
ときがポイントという結論に達した。それは、ここでかき混ぜると粉中のグル
テンのために粘性が変わるためではないかといことである。かき混ぜ続けると
液が黄色から白に変わっていく。このとき粘性も落ちていくのだがこの粘性が
落ちるとうまくいかなくなるらしい。
 この混ぜるときのポイントはだまを作らないことなのですがそのだまを一生
懸命かき混ぜて潰していく藩の法がいい加減にかき混ぜてやる子よりも成功率
が下がる(まじめな子が馬鹿を見る)という理不尽さを感じていたのですがか
き混ぜないと言う指導をした結果成功率が上がりました。
 またこのとき出来る玉はスプーンでつぶすようにしました。
 このパンの素を交流電流計がつながっている装置に入れ、電灯線につなげま
した。(電灯線につなぐ作業は最後と強調する、生徒はなぜか電灯線をつない
だあとにパンの素を装置に入れるので、スプーンと電極が接触して感電する)
 入れると1.0Aの電流が流れる。20秒ごとに電流計の目盛りを読むと2
分間ほどで2.4Aの最高値を示し、その後1Aを4分間保ち、しゅーしゅー
と煙を出しながら膨らみ、電源を入れてから7分で反応が終わる。
 これだけ改良してもまだうまく電流があがらない班が出てくる。そこで、そ
ういう班には次のようにして焼き上げた。
 電源を抜き、一度電極を抜く。電極にこびりついた蒸しパンを容器の中では
がす。(電極の周辺だけが焼き上がるので反応が止まってしまうと考えられ
る。まるで電気分解の分極現象のようだ)パンの素をかき混ぜ(生徒はきた
なーいといやがる)もう一度装置をセットし電源をいれる。すると今度は前述
したように電流が流れる。
 この反応は電流計が0になったら反応の終わりであるが、一度失敗し、かき
混ぜた班では7分経てばやきあがる。
 焼き上がったら電源を抜く。パンは電極をうまく使うと容器からとれる。そ
のとき生徒の歓声が起こる。
 このパンはミルクセーキが少ないせいかかたい。また苦みが少しあるのでシ
ロップが人気がある。
 このあと後かたづけをする。生徒がてきぱきと動けば時間内に終わるが失敗
などすると時間が足りなくなるので注意が必要です。

 以上3クラス実施しての報告でした。

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73回 10月29日 パラゾールの沸点は上がる
沸点上昇の実験は「混合物の沸点は一定でないために測定しにくい」というこ
と+があるせいか、実験書にあまり取り上げられていないので今回私は以下のよ
うな授業を行ったので報告します。

 導入:溶媒に溶質を入れたとき溶質分子が溶媒分子の運動を妨げるモデルを
   示し、溶媒を沸騰させるには純物質の時よりも多くのエネルギーが必要
   つまり、沸点が上がるんだと言うことを説明する、

 展開:実教出版の化学1Bの教科書(B5板)P78ページの空欄に沸点上
    昇は蒸気圧曲線が右にシフトするから起こると言うことを蒸気圧曲線
    を記入させ理解させる(教科書に図がないから)

    ここで、沸点上昇は溶媒分子の運動によって起こることから溶質の種
    類には関係せず、溶媒によって決まることを説明する。

    1gの尿素と1gのパラジクロロベンゼンを試験管にそれぞれ入れ、
    それぞれの試験管にエタノール5ml加え、温度計を差し込む。湯せん
    上で温め、沸騰のしやすさを見る。

     生徒は尿素の方が沸騰しやすいという結果を得る。
    
     ここで、生徒に課題
    なぜ、同じ質量を溶かしたのに沸点上昇に差があったのだろうか。

     ここでチャイムが鳴る。

    生徒の答え
     物質が違うから。
 確かにその通りだ。しかし、沸点上昇は溶質の種類に関係ないと説明したの
にこんな答えが返ってきたと言うことは生徒はどうやら理解していないらし
い。

 ここでは、「尿素の分子量がパラジクロロベンゼンの分子量の半分以下であ
るからモル数は尿素の方が大きい」だから尿素の方が沸点上昇が大きいと言う
ことを導いてほしかったのに残念でした。やはり沸点上昇は難しいです。

         
 沸点上昇で、尿素とパラジクロロベンゼンを同じ質量を同じ量の溶媒に溶か
すと分子量の小さい尿素の方が沸点上昇が大きいはず。
 ところがここで私は重大なミスを犯してしまいました。それはこの沸点上昇
が使えるのは「希薄溶液」であること。
 この実験では尿素溶液は飽和溶液に近いぐらい溶解しているので沸点上昇が
観察されないのではないか。(なぜなら一度熱して溶かしても冷えると結晶化
する。そして思った。尿素の再結晶で得られる針状結晶はきれいだ)
  さらに沸点上昇どころか、沸点が75度となぜか下がってしまいました。
(これは尿素の溶解が吸熱反応のためかなあ???)
そしてこの沸騰、なかなか激しくて沸騰石を入れても収まらないくらいでし
た。そこで、この実験は他のクラスで行わず以下の実験に変えました。

 パラジクロロベンゼンを1g、2gにしたとき、沸点上昇をもとめる。

 この実験を行ったのですが沸点測定はなかなか難しいものがありました。

問題点
 1.沸点が一定でないため、測定しづらい
  温度上昇の割合が1gの方が大きく、2gの方が小さいので沸点上昇を逆
  にとらえてしまう。 
 2.可燃性の溶媒を使っているため、引火しやすい。
 3.廃液処理が困難

これらをクリアする実験は何かないでしょうか。

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