代謝・異化・同化 (平成14年度 生物1B 10月〜12月 授業報告)


1時間目 細胞は化学工場
2時間目 触媒の話
3時間目 【生徒実験】 カタラーゼの実験
4時間目 寒天とゼラチンゼリーの話
6時間目 酵素のまとめ(1)
7時間目 酵素のまとめ(2)
8時間目 発酵と腐敗(1)「アルコール発酵」
9時間目 発酵と腐敗(2)「乳酸発酵」
10時間目 発酵の科学史
11時間目 歪曲された科学史(ゼンメルワイスの悲劇)
12時間目 発酵の正体
13時間目 クエン酸の役割
14時間目 【生徒実験】 コハク酸脱水素酵素の最適温度を調べる実験
15時間目 Tシャツを使った電子伝達系モデル
16時間目 業者模試の復習
17時間目 呼吸商(啓林館 生物1Bの資料学習から)
18時間目 呼吸商の続き
19時間目 光合成の仕組み
20時間目 カルビンベンソン回路の仕組み
22,23時間目 【生徒実験】光合成素の分離
24,25,26時間目 限定要因のグラフを光合成の仕組みから読み取る

26時間目 遺伝の導入
27時間目 血液型の遺伝
28時間目 舌が巻けるかどうかを調べる
29時間目 【生徒実験】一遺伝子雑種のモデル実験
30時間目  遺伝の学習のシュミレーション

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1時間目 細胞は化学工場

      NHKスペシャル「人体 肝臓」を使って、アルコールの分解を実験室で行ったら・・・・
      これを温和な条件で行っている肝臓の話からスタートしました

2時間目 触媒の話

      時計反応の実験を導入に持っていき、化学反応は温度が大きいほど速度が速い。 
      それは活性化エネルギーと言う山を超えやすいから。
      触媒とはなにかという話から
      肝臓で起こっていることを工場で再現してみたらというのでNHKスペシャルを使いました。
       廃棄物でさえも利用する生物の合理性、しかしそれが生物濃縮を起こさせることにもなる。

      生物濃縮の怖さで終り

3時間目 【生徒実験】 カタラーゼの実験

      カタラーゼの実験です。酵素は大根汁を使いました。(肝臓はにおうので)
      10月の後半はさすがに寒くてなかなか反応が進まなかったりします。
      それにしても、試験管をお湯に浸すといっているのになぜ、試験管の中にお湯をいれたり、お湯の中に      試験管のものを入れたりする生徒が毎年出るのだろう。
      ここでは最適pHと温度で二酸化マンガンとの違いを実験しました。

4時間目 寒天とゼラチンゼリーの話

      ゼリーにはゼラチンと寒天から出来たものがある。

      二つの違いは成分の違い。
      ゼラチンはタンパク質
      寒天は食物繊維

      ゼラチンを試験管に入れ、持ってきた水筒のお湯で溶かしたものを2本用意(2ml)
      さて、ここでゼラチンは加熱してはいけない。それは変性するから。

      寒天を試験管に入れ、これにお湯を入れ、加熱してとかしたものを2本用意(2ml)

      それぞれ1本にキウイフルーツの果肉片を入れる。

      しばらくそのままにしておき、

     2時間目の授業の生物濃縮で怖いものの話の続き
       環境ホルモンの話

     そして、その合間にゼラチンの方を氷ー食塩寒剤で冷やす。
     寒天ゼリーは固まる。
     ここでキウィフルーツにはタンパク質分解酵素があるが、この酵素は食物繊維を分解しない
     と言うことをまとめる。

     そして、10分後、ゼラチンが固まったのを確認。

     ゼラチン+キウィは固まらない。つまり、タンパク質は分解された。
 
     酵素が反応する相手の物質を基質といい、特定のものにしか反応しない性質を基質特異性という

6時間目 酵素のまとめ(1)
7時間目 酵素のまとめ(2) 

     ATPの構造とエネルギー産生の仕組みをアニメーションで紹介
     能動輸送の復習
     呼吸の話
      物質を分解してエネルギーを取り出すのが呼吸
       酸素を使わないもの
       酸素を使うもの
      がある。



8時間目 発酵と腐敗(1)「アルコール発酵」

      万物創世記「酒」から
      酵母の増殖と酵母の話
     テクノ探偵団「酒造」から
      日本酒は酵母とコウジのハーモニー
     万物創世記「微生物」から
      発酵の仕組みは経験的に知られていた。
       人の役に立つものかどうかで発酵と腐敗を分けた。


9時間目 発酵と腐敗(2)「乳酸発酵」

      所さんの目がテン「ヨーグルト」から
      乳酸菌が作り出す食品
       乳酸菌によって有害な菌は死滅する。
      発酵食品の利点
       生物で言う発酵とは「酸素のない状態での呼吸」をさす。

10時間目 発酵の科学史

      細胞説を唱えたシュワンが抹殺された発酵の科学史
       シュワンは酵母の発酵をみたが認められなかった。
      サイエンスチャンネル02年10月5日放送
      「偉人たちの夢 パスツール」
      セミナー生物「酸素のない呼吸」
       リービッヒとパスツール、自然発生説との闘い

11時間目 歪曲された科学史(ゼンメルワイスの悲劇)

      消毒の祖はリセターではなくゼンメルワイスであった。
     
      消毒は面倒だ。そして、病原体の存在すらわからなかった
     時代。それまで、「消毒をしなかったために死においやった」
     という自責からこれを広めようとした。

     権威によって消されたゼンメルワイスの話
     彼は精神がおかしくなったと精神病院入りされる。
      そして、本当に精神がおかしくなって死んだという誤った見解
     が起こった。しかし、彼は精神がおかしくなったわけではない。
      敗血症と戦うなかで自ら敗血症にかかってしまったのだ。   
     47歳という短い生涯、彼があと、10年生きていれば、コッホ、
     パスツールによって病原体が明らかになっていただろう・・・
     参照「医師ゼンメルワイスの悲劇」南和嘉男 講談社 1988

     パスツールは自然発生説を打ち破ったが打ち破れない敵があった。
     それが、伝染病・・・二人の子供を伝染病によって奪われた。

     それが、パスツールにワクチンを作らせることになったのでは・
      パスツールがニワトリコレラのワクチンを見つけたのは偶然
     だといわれている。
      科学の世界で偶然に見つかったものといわれているが、
     偶然がうまれるのが必然なくらいの研究があるというのがある。

12時間目 発酵の正体

     パスツールによって酵母によって発酵が起こるということが示され
     たが、その本体は・・・
      ブフナーは酵母からなにか有益な物質を取ろうと思い、
     酵母を圧搾した。そして夏の休暇を取るために保存液に入れたら
     そこから発酵が起こった。
     (セミナー生物の説明は話の順序が逆ですね)
     参照「生化学を作った人々」丸山工作 裳華房
      そして、様々な研究から発酵は酵素が行うということをつきとめた。
      さらに乳酸が出来るときもアルコールが出来るときも中間物質
     としてピルビン酸が出来ることもわかってきた。

13時間目 クエン酸の役割 

      導入「最近疲れ易い人が増えているという」
      発掘あるある大事典「クエン酸」02年2月3日放送
      発掘あるある大事典「ビタミンB1」01年5月9日放送
     ビタミンB1の働きとは
      酸素をつかった呼吸とはなんなのか
      ピルビン酸がクエン酸回路に入るためにはビタミンB1が必要
      クエン酸回路の説明 

14時間目 【生徒実験】 コハク酸脱水素酵素の最適温度を調べる実験 

      クエン酸回路の元になったセントジョルジ回路の元になった
     トルステン・テュンベリの実験です。
      クエン酸回路の主反応は脱水素酵素によって水素が出てくる
     というのを実感する実験です。

15時間目 Tシャツを使った電子伝達系モデル

      脱水素酵素の働きによって発生した水素が高エネルギー化合物ATP
     になるための電子伝達系の話です。
      昨年、不評だったTシャツで電子伝達系を発展させました。
      (昨年は何度もやったので不評だったということでことしは
     1回だけさらりとやりました。)
     これで最大で38ATP(受験数字ですけど)
           12分子の水が出来るということを示しました。

16時間目 業者模試の復習 

     先週、業者模試がありました。この時間はその問題を振りかえっ 
    て考えてみようというものです。
      この模試にクエン酸回路があったのです。
     クエン酸回路で発生する二酸化炭素は、呼吸で取り入れた酸素
    由来ではない。
     酸素は電子伝達系で水を作るのに使われる。

    ここで化学反応式
    C6H12O6+6O2+6H20→6CO2+12H2O+エネルギー

    で化学で言う反応式と生物の中で行われている反応式では
    違うところがある。それは両辺に水が6分子あること
     ふつうにグルコースを燃やすとこの6分子はいらないが
    生物の身体となると必要になる。
     それは、この6分子がなければクエン酸回路は回らないし
    実際、電子伝達系がフルに活動したとして12分子できるから。
     
17時間目 呼吸商(啓林館 生物1Bの資料学習から)
      コムギとゴマの呼吸商を求める
18時間目 呼吸商の続き・・呼吸商からなにを栄養源にしているかがわかる。
     そして、クレブス回路の発想の元になった
     オルニチン回路の話
      オルニチン回路は良く出来た反応
      ここで物質が作られるときはエネルギーが必要ということ
      がポイント

19時間目 光合成の仕組み

      ヒルの実験の演示。

       光合成とは水を分解して水素と酸素に分ける反応

20時間目 カルビンベンソン回路の仕組み


22,23時間目 【生徒実験】光合成色素の分離

     吸収スペクトルの演示(黒い炎)。

     この日のためにナトリウムランプを備品請求してきました。黒い炎は食塩水をメタノールに溶かしたアルコ     ールランプを使いました。炎の色は黄色、ランプの色は黄色、二つが合わさると黒くなる。
 
     つづいてペーパークロマトグラフによる色素の分離です。毎年行っている方法ですが、はじめの一時間で     行ったときはスポッティングの濃度のせいか
     うまく展開できませんでした。
     この日は2時間あったので、もう一時間でやり直しました。

      つかった葉はどくだみの葉です。この植物を使った理由

      1 12月という時期に屋外で取れる植物は数少なく、これはこの時期でも取れる。
      2 雑草の中で、キク科、イネ科などよく見かける植物は葉が硬くすりつぶす
        のが容易ではないがドクダミは誰でもすりつぶせる。
      3 一枚の葉から展開に必要な量を抽出できる。
      4 4つの色素がはっきりと識別できる。
      5 葉の構造をみることで陰葉の特徴を見ることができる。

      こうして、光合成色素の分離の実験の後、窒素同化の話で二学期期末考査になりました。

     窒素循環の話とか詳しく触れたいところですが、エッセンスだけで終わりにしました。

テストの生徒の感想の中で
「体の中でさまざまな化学反応が知らない間に起きているということに神秘性
を感じた」
「中学のときに生態系のサイクルを学んだ。そのサイクルが体の中にもあって
いらないものを利用するシステムがある。そのリサイクルが、ときには生物濃
縮という形になり生物に悪影響を与える。環境全体のシステムの縮図が体の中
にある」
というのがいくつか見られました。
 今回のテスト範囲は「酵素」「同化」「異化」という単元では3単元にもまたがるところを有機的に結び付けました。


24,25,26時間目 限定要因のグラフを光合成の仕組みから読み取る

         教科書の順番ではヘルモントの実験などの光合成の歴史の後に限定要因の話があり、限定要因         は実は光合成の仕組みに関係するという話になっていますが

         これを、まず、光合成の仕組みを理解した上でこの歴史的事件を見つめて考えたらどうなるか、

           グラフの意味は見えてくるのではないか

         ということで

       光合成を
         光があたって光合成色素が活性化される条件(明反応)

         カルビンベンソン回路を回すための条件(暗反応)

         という風に分けて物事を考えました。

        まず、カルビンベンソン回路は合成工場という位置付けで
          工場に必要なものは、動かすためのエネルギーと原材料と工場の機械
          というものを考えました。動かすためのエネルギーは光から与えられる。
          このエネルギーがなければ原材料と機械があっても動かない。
          原材料というのは二酸化炭素と水、これが不足していると動かない。

          不足している世界を考えてみる。
       それは、高地、気圧が低いから材料の二酸化炭素が少ない。
       また、砂漠地帯、水が少ない。こんな材料の乏しいところで機械を動かすため
       にはこの工場の下請工場で二酸化炭素を濃縮している必要がある。

       それが、このベンケイソウとベンケイソウを持ってくる。CAM植物の話
       また、工場にエネルギーがいっぱい送られてきても材料が不足していれば工場
       はもう能力の限界になる。それが光飽和点
       これを克服するために、工場に材料を提供するC植物、さとうきびみたいな
       ものがある。

        さて、この工場の機械というのは「酵素」だ。酵素はタンパク質でできた生体
      触媒だから温度に影響される。

       このようにさまざまなグラフを読み取るということを行いました。


26時間目 遺伝の導入

 二重まぶたと一重まぶたの遺伝の話です。

27時間目 血液型の遺伝

       ABO式血液型とは何か。それは赤血球の表面につくタンパク質の違いからくる。

      つまり、このタンパク質を作る酵素が作られるかどうかというのが遺伝によって決まる。
      ということで酵素反応は遺伝するという観点ですすめました。 

28時間目 舌が巻けるかどうかを調べる

       舌が巻けるという形質は優性形質である。このため、純系で舌が巻けるのか
       それとも雑種で舌が巻けるのかは形質を見ただけではわからない。
       ではどうするか。これで考えられたのが、検定という方法

        では検定はどう行うか、わからないものを検定する方法
        優性ホモではぜんぜんわからない。劣性ホモなら1:1 雑種なら 3:1
        で雑種かどうかを見分けられる。

        ところがこれはあくまで確率の話、人でこの方法を調べるのは難しい。

        ところがメンデルはこれをうまくやった。
 
       それはメンデルはたくさんの子孫を短時間でそれも形質が安定していて、純系
       が得られやすい「エンドウ」というものを使って調べた。

29時間目 【生徒実験】一遺伝子雑種のモデル実験

       このモデル実験は昔はビーダマでやっていました
       コインの裏表というのもあります。

       しかし、今年はカード2枚で行いました。

      3人組みを作る。
      一人は卵役、一人は花粉役 一人は記録係で
     100回行う。

      そうすると、丸:しわ=76:24

      ぐらいになります。

30時間  遺伝の学習のシュミレーション

       KIT「遺伝の学習」というMSDOSで作られたものをWindows版に移植したもので
       10年以上前の中学校の教材ソフト
        そのときには二遺伝子雑種までやっていた。だからこのソフトがある
       しかし、君たちの習ったのは一遺伝子雑種だけ
       そして、今、中学校では遺伝すらやらなくなった。
        教科書から消えた遺伝の学習、しかし、消えたから必要ではないのではなく
       て消えても必要なんです。
       遺伝というのはひとつの遺伝子だけが遺伝するわけではない。多くの遺伝子
       が遺伝し、さまざまな個性が生まれるのだから。

       というわけで二学期の授業は終わりです。明日から冬季課外合宿です。

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