植物バイオテクノロジー
平成19年度は農業科目「植物バイオテクノロジー」を行いました。
その授業実践をここに報告します。
■ニンジン種子の無菌播種■
1月9日
三学期は授業回数が少なく、植物バイオは5回しかありません。
5回で何が出来るかということで
数ヶ月かかることをエッセンスだけやることにしました。
今日は無菌播種です。
無菌播種の目的
1 なかなか育てられない植物を育てる
例:シラン
2 無菌の植物体をえる。
(タネの中は無菌と考え、外側を殺菌すれば発芽して成長した
植物体は無菌と考えられる)
このあと、溶液の計量器具の使い方と名称と注意点をやりました。
駒込ピペット・・・かんたんに使えるが精度は低い。
メスシリンダー・・大量の液体を測りとるときに使う
メスピペット・・・口で吸い指で押さえる。目盛りがついている。
ホールピペット・・・標線まででちょうどの量を測り取れる
メスフラスコ・・・これのポイントはすり栓。
標線まででちょうどの量の液体を作ることができる
このあと、メニスカス、目線の位置など諸注意をして一時間目終わり
2時間目
まず、有効塩素10%の次亜塩素ナトリウム水溶液から有効塩素1%10ml
つくるのに減益はどれだけ必要か。
という簡単な問題(10倍希釈)で殺菌水を各班作る。
そのなかに、黒田五寸ニンジンの種をいれ、15分殺菌
(70%アルコール殺菌は行いませんでした。時間が無かった。)
この待ち時間の間にクリーンベンチでの無菌播種の方法を説明しました。
1 UVランプを消す。
2 クリーンベンチの電気、ファンをつける。
3 手を洗い、70%アルコールで消毒
4 パイロット炎をつける。
無菌播種の方法
1 クリーンベンチの中に器具を入れる。
2 バーナーで火炎滅菌したピンセットAで滅菌したピンセットBの
アルミフォイルを取る。
3 培地入り試験管のふたの部分をあぶる。
4 ピンセットAの火炎滅菌し、試験管のふたを取る。
5 ピンセットBを火炎滅菌し、その後、殺菌液中のタネを取る
6 培地の上にタネを乗せる
7 試験管の上部をあぶる
8 滅菌したアルミフォイルの入ったシャーレをあける。
9 ピンセットAを火炎滅菌し、アルミフォイルをとり、
試験管にかぶせる。
10 ふたをする
11 試験管の上部を加熱する。
この一連の作業を行いました。やらなくてもいい無駄な行程もあるかもしれませんが
コンタミを防ぐ一般的なやり方で行いました。
この無菌播種をしたものを培養室で暗い条件20度で発芽を待ちます。
一週間前にこの行程を教師側で行っています。そのため、
来週には発芽して延びているはずです。来週は胚軸の切り出しと組織培養です。
1週間前に組織培養を始めたものはビストリフィケーションのような
感じになっています。(ピンチです。カルスにしたかったのに)
2,4−Dの濃度が10ppmと大きかったからかなぁ?
斜面培地にしたほうがよかったかなぁ?
培地自体が賞味期限切れか?
(カルスは島津理化のキットとかのほうがいいのかなぁ?)
とにかく順化まで行くかどうかわかりませんが5回のうち1回がこれで終わりま
した。
■ニンジンの胚軸の置床■
1月16日
今日は培地の種類というのをやりました。
培地は植物が成長するのに必要な養分が含まれていなければならない。
有名なところでMS培地(ムラシゲ−スクーグ培地)
H培地(ハイポネックス培地)
をおさえておこう。
この培地の形態には
固体培地がある。これは寒天などで培地を固めてあるもの。
植物体をこの上に乗せるので酸素を供給できる
しかし、植物は成長するときに有害物質を出す。
それがたまる。これを防ぐために斜面培地というように
培地を斜めに固めるのだが、これも完全ではない。
有害物質対策に用いられるのが、液体培地
しかし、この培地では酸素不足になる。
このため、振とうさせたり回転させたりする。
この二つの培地の良いところをとったのが
「ペーパーウィック法」 酸素が供給できる
有害物質は流れる
さて、培地にいろいろなものを入れることで
植物体をいろいろ変化させることができる。
一学期に植物ホルモンをやった。
植物ホルモンがさまざまな働きをする。
例えば、オーキシンとサイトカイニンの関係
オーキシン多く、サイトカイニンが少ない →不定根ができる。
オーキシンが少なく、サイトカイニンが多い→不定芽ができる。
2,4−Dを加える → カルス(未分化の細胞のかたまり)形成
(1時間終わり)
ということで、今日はこれを確かめてみよう。
今日は、MS培地(斜面培地)3本(IAA、NAA、2,4−Dそれぞれ1mg/l)
に2週間目のニンジンの胚軸を3等分していれる。という無菌操作を次の時間
行ないました。(35分ぐらい)
操作自体手馴れてきたのですが、無菌操作の手順がすこし雑になっている
気もします。試験管の上部をあぶるとかをしなかったり、ピンセットで
アルミ箔をとらずに手で取っていたりします。
■カーネーションの茎頂点の観察■
1月23日
2週間前に仕掛けたカルス形成用の組織が全然分化していません。
植物ホルモンが古くなっていたのかな?
pH調整の失敗?
これがうまくいかないので、今日は「植え接ぎ」というのをやろうと思ったのですが
予定を変更して「茎頂培養」の話をしました。
メリクロン苗はどうやって作られるか。その利点等を一時間かけて説明しました。
そして次の一時間はカーネーションの成長点を
脇芽からとる出す。
冬の今の時期は寒いせいもあり、茎頂点も小さい。
私も昨日予備実験をしたところ1個とるのに15分ぐらいかかりました。
そのため、生徒実験では丸々1時間かかるかなという思いでやりました。
この難しいことに挑戦するというのが結構面白い。
生徒は目が痛くなりながら実体顕微鏡を注視していました。
結果は
http://gomasan.cocolog-nifty.com/
に写真を載せました。写真はリコーのCaplio R5で
望遠最大でコメリート撮影し、ケラレをトリミングで取り除きました。
肝心な成長点が光って写ってしまいよく分かりません。
■継代培養と初代培養■
1月30日
まず、授業の流れの確認から
1月9日 ニンジンの無菌播種 →本日で21日目
1月16日 ニンジンの胚軸培養→本日で14日目
ということで、無菌播種をしたニンジンも4cmぐらいに伸びています。
昨日までに培地の準備が出来なかったので今日の朝から準備です。
今日は、昨年度、植物バイオを選択した生徒が作成した茎頂培養した
カーネーションの継代培養とカランコエとセイロンベンケイソウのさし葉培養
の予定で、次の培地を用意しました。
MS培地に30g/lのショ糖、NAA 0.1mg/l pH5.8
ショ糖は生長用、NAAは発根促進用です。
準備をしてオートクレーブにかけたのが9時50分です。
3時間目の授業の始まるころには98度くらいになっていました。
授業は最初に今まで行った実験の結果の検証を行いました。
検証では、コンタミがどう出るかというのをやりました。
そして、
2,4−D 培地ではカルス生成
IAA 培地では不定根生成
NAA 培地では不定根生成
を確認しました。
そのあと、培養について
ということで
培養では
・100%の湿度である。→ビストリフィケーションが起こりやすい。
・温度が一定(25℃)
・日照時間14から16時間
・光合成能力が小さい
・培地の養分が生長には不可欠
このため培地の養分が足りなくなると死んでしまう。
また、養分を変えることで生長をかえることが出来る。
たとえば、トレニアという植物
普通に培養するとただ苗が大きくなるだけだが
窒素養分を減らすと花を咲かせたりする
→インビトロフラワーと呼ばれ、人気がある。
カルスもホルモンをかえた培地では違うものに生長する。
このように違う培地に移植することを継代培養という。
(同じ種類の培地も含む)
今日はカーネーションの継代培養をしてみよう。
また、ベンケイソウの仲間は葉ざしで増やせるので
カランコエとセイロンベンケイソウを使って
葉ざしをしてみよう。
ここで3時間目の授業が終わる。
8分後、オートクレーブが終了し、固体培地として斜面培地にする。
今回の実験の方法を説明している間に寒天培地が固まりました。
クリーンベンチでの作業です。
カーネーションを節間で切って培地に下の部分をさす。
というものですが、「節間ってなに?」
「さすってどういうこと?」
ということで、さし芽になっていないものがいっぱい
出来ました。(これも学習ですからこのまま培養しましょう)
ここで残り10分ぐらいということで、ベンケイソウの葉さしは
2種類用意したのですが1種類だけにしました。
(これもささっていなかったりします)
http://gomasan.cocolog-nifty.com/
に写真をアップする予定です。
■葯培養の原理■
2月13日
この季節、スギ花粉の季節ということで今日はスギの花粉の観察
とかしようかなと思ったのですが、校内の杉はどれも花が咲いて
いなかった。
寒い南風に吹かれながら探したのですがネタになるようなものは
なかった。(マツはまだまだ・・・。アオキが蕾が出来ていました)
今日の授業は「葯培養」の話をしたかったのです。
花のつぼみから、葯を取り出して培養するというものです。
学校にLS培地はないですし、培養する期間もないので
葯を取り出すと言う作業しか出来ません。
これではつまらないだろう
ということで、減数分裂の観察をしたいなぁと
思っていました。
しかし、この時期に葱坊主はない。ミドリアマナも持っていない
ムラサキツユクサ、ブライダルベールは季節外れ。
ユリもない。バッタもいない。
ということで材料がない。
そんなわけで、学校にいたるところに咲いているツバキを教材化
しようと思いました。
ツバキの花の咲く前を取り出すと、葯がいっぱい観察できる。
これを観察することで葯を知る。
葯を切り開いて中の花粉を取り出す。
酢酸カーミンで染める。
蕾が小さければ減数分裂が観察されるのではという淡い期待をもって
いました。
しかし、無駄だった。いくら小さい蕾をとっても全然観察できません
でした。
やはり、減数分裂の観察はユリ科植物のように染色体の大きいもの
がいいのかな?
そんなわけで今日の授業の流れ
1 今までの実験の経過の観察
・継代培養はどうなったか。
2 順化の説明
3 葯培養の原理(ビデオ「バイオテクノロジーの世界」を使用)
で1時間
もう一時間は先ほどの時間のまえにスライドガラスの上に
10%スクロース液を寒天に溶かしたものをぬり
そこに花が開いたツバキから花粉を取り、水の入った
シャーレに割り箸を土台にして作った湿室をつくり
入れておいたものを用意してありました。
生徒実験
1 小さなツバキの蕾から葯を取り出し、花粉を取り出す
2 花粉を観察する
3 酢酸カーミン液で染めて観察する
4 花粉管の伸長を観察する。
5 杉は見られなかったので代わりにヒマラヤスギの花粉を
観察し、花粉の形もいろいろあると言うことを知る。
6 花粉を取り出すことまで無菌作業をすれば「花粉培養」
ということも出来るという話を付け加える。
で終わりました。
減数分裂の観察がしたかった。出来なくて残念でした。
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