植物バイオテクノロジー
平成19年度は農業科目「植物バイオテクノロジー」を行いました。 その授業実践をここに報告します。

■pHで色水作り■

9月12日
今日の朝の大雨は驚きました。道路は冠水して川になっていました。
電車も止まっていました。そんなわけで始業時間は30分遅れの 短縮40分授業でした。50分あるものだというつもりで授業の準備を しているだけに短縮は辛いですね。
さて、今日はバイテクと圃場での栽培の違いの話しから始めました。
(圃場での栽培でもバイオテクノロジーは使いますが、 ここでは狭義のインビトロ=実験室内をさすこととします。)  室内 と 屋外 の違い
 環境をコントロールできるかどうか
  光や温度の調節 
  生育成分の調節
  無菌かどうか
今日はこの生育成分の調節の中で欠かせないpHの調整ということで pHとは何かをやっていこう。
pHは水素イオン濃度を水素イオン指数と呼ばれるもので示したもの。
なぜ指数と呼ばれるもので示すか。
その前に濃度について考えなくてはいけないが、モル濃度の話も大事だが この話は化学でやることとして、ここではpHというものはどういうものかを 実験を通じて感じてもらおう。
薄い水溶液(希釈水溶液)では、pHは0から14まである
7が中間でそれより小さいほど酸性が強く、7より大きいほどアルカリ性が強い。
これはどのように強いのか。
ここにpH1の塩酸を持ってきた(0.1N塩酸)
これを試験管に10ml入れる。
ここで各班に2本の駒込ピペットを用意した。
今日マスターするのは、このピペットの使い方
そして、共洗いの仕方。
濃いものを薄める方法
ピペットを区別して使うという考え方
ということで
pH1の塩酸から1mlとって別の試験管にいれ、そこに蒸留水9mlをいれて pH2の溶液を作る。
これを6回繰り返して
pH3
pH4
pH5
pH6
そしてかなりpH7に近い液
を作りました。
同様にpH13の水酸化ナトリウム水溶液(0.1N水酸化ナトリウム水溶液) をうすめて
pH12
pH11
pH10
pH9
pH8
を作りました。
 これを 水素イオン濃度 と 水酸化物イオン濃度の表でまとめる。
さて、無色の液でどれがどれだかわからないがここでpHを調べるものを使う。 これに使うのがムラサキキャベツ色素 ということでムラサキキャベツを細かくしてエタノールをいれてもんで色素を出す。
そして、各試験管に2mlずついれ、色を調べ、表でまとめる ということで
pHというのは1違うと濃度が10倍違うということ
pH7のときに水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度が同じになるつまり中性に なるということ
などをまとめて終わりにしました。
 

■カタラーゼの実験■

9月19日
植物バイオテクノロジーの授業ですが、材料に動物を使っています。
前回、pHの授業をしました。なぜ、pHが大事かというと生体内の反応は pHによって変化する。
ということで、生物実験ではおなじみのカタラーゼの実験をしました。
まず、オキシドールは分解されると酸素と水になる。
その反応を早くする物質・・・触媒
 触媒の条件・・・化学反応を起こすときの山(活性化エネルギー)を低くする
          少量でいい
          反応前後で変化しない。
今回は生徒実験を通しながら授業を進めていきました。
まず、オキシドールと二酸化マンガンの反応で線香で酸素発生を確認する。
つづいて、鳥レバーとオキシドールで同様に行う。
はじめを無機触媒、後者を酵素
 この酵素をカタラーゼといい、どんな生物でも持っている。
 何故もっているか?それは、日曜日の
所さんの目がテンを見た人はわかると思う。
 テーマが老化だったが、老化を起こす原因が呼吸をすること
 呼吸をするとどうしても過酸化水素のような活性酸素ができる。
 それが老化を引き起こす。だからカタラーゼでなくそうとする。
そのカタラーゼと無機触媒との違いを見てみよう!
まずは、これ、pHによる変化ということで1N塩酸2mlにつけたレバーと1N 塩酸2mlにつけた二酸化マンガン
つぎに1N 水酸化ナトリウム水溶液2mlにつけたレバーと同濃度につけた二 酸化マンガン
この実験でカタラーゼの反応はpHが代わると起こりにくい(完全に起こらない わけではなかった。)
無機触媒は関係が無い
次に温度による変化
氷水につけたものとお湯の中につけたもの。
化学変化は高温ほど早くなる
しかし、酵素は高ければよいわけではない
(この実験では温度調節ができなかったので詳しくできませんでした)
次に煮詰めたレバーと煮詰めた二酸化マンガン
この順番で進めました。
この実験のあと、すべての結果をまとめて
酵素の性質 最適pHをもつ
        基質特異性をもつ
 そして高温では性質を失う
 これらの性質はすべてタンパク質でできているから。
この酵素反応が生体内の反応で重要であるため、温度とpHというものが かなり重要である。
(これで2時間の内容です)
実験には必ずブランク(対照)をおくということを生徒に意識させるように準備 しました
がブランクの説明まで出来ませんでした。
なぜ、レバーにしたか。
 今まで多くの野菜でやってきたが、野菜よりも一番、カタラーゼの反応が安定 して得られる。
 ただし、においがきついので1999年度やって以来、いままで、普通高校で はやっていませんでした。
 レバーは解毒作用が大きいという話もできる
 時間があったら心臓の解剖をしたかった。(2心房2心室)
 冷凍保存をすれば、次回も使える。

■ホタライトを使った酵素反応■

9月26日
 生物の方では酵素反応が生物2にいき、化学でも化学2を選択しなければ 酵素反応にお目にかかれない今日この頃。
 私のお気に入りの実験です。

途中、ウミホタルの話もしました。盛りだくさんの内容です。
今日の植物バイオテクノロジーは、まず最初に先週の実験の 後片付け後の試験管ということで、
 前回は肝臓を使った。
 水で流しただけでは落ちない。
 食器を洗うときは何を使う?
  実験で怖いのは、器具が汚れていることで雑菌など  予期せぬものが混ざる、コンタミと呼ばれるもの
 ということで試験管の洗い方の話をしました。
 コンタミをしたまま実験をし、バイテクでは結果が出るのに 時間がかかる。せっかく操作は出来ているのにコンタミでだめに なってしまったらどうしようもない。
雑菌とかのコンタミがあるかどうかを調べる方法
 培養してコロニーと呼ばれるものを作って数えるのが一般的 しかし、これには時間がかかる。
そこで早く、簡単に行なえる方法が開発された。
それは キッコーマンが開発したホタルの発光現象を利用したものだ。
これはどういうことか。
生物がコンタミしているならば、そこにはATPと呼ばれる物質が必ずあり それに反応して発光する仕組みだ。
ということでATPとは何か。
「歌う生物学」TBSブリタニカ
を使って説明しました。
ATPの分かりやすい模型も使いました。
能動輸送の簡単な説明
 細胞の外側にナトリウムイオンがあるとそれが細胞の中に入り込んでしまう
 細胞はそれを外へ出そうとする。このときにATPを使う。
この後、キッコーマンが開発したルシフェラーゼはどのようにして作られたのか
の話をしました。
さらにホタルの光の点滅は1/fゆらぎで求愛をすること
 他の土地から持ってきたホタルは光るけれど警戒発光であること
 などホタルの話をいろいろしてから実験に入りました。
 素敵な宇宙船地球号2007年8月19日放送より
試験管の中にホタライトB液(ルシフェリン+ATP)2.5ml入れたものを1本配ります。
そしてA液(ホタライト)をしょうゆのたれビン(1ml)を配り、 部屋を暗くして発光することを確認します。
2本目 氷水(7度)にいれる。明かりが消える。手で暖める
明るさが戻る。ということでホタルの光は寒いと光らない。
次に、熱湯(72度)の中に入れる。
しばらくすると明るくなって暗くなる。氷水につけても元に戻らない。
明るくするとゼリー状になる。このことで混合液の物質の構造が変わった ことがわかる。
さて、何が変わったのだろうか。
このゼリー状の液を2本作る。
1つめはルシフェラーゼを入れる。
 もしも、ルシフェリン+ATPの構造が熱湯で変わっていたのならば、
 ルシフェラーゼを入れても変化しないはずである。
  ここで発光する。ルシフェリン+ATPは熱で壊れていなかった。
2つ目はルシフェリン+ATPを入れる。
 ここでルシフェラーゼの構造が変化したのならばここで変化しないはず
 実際 変化しなかった。
ここで、実験結果をまとめる。
1 化学変化は温度によって変わる
2 酵素は高温になると構造が変わる
次にpHによる変化を見よう。
新しい試験管で最初は0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液を入れる。
光が薄くなる。
次に塩酸を入れる。光が戻る。
酸とアルカリは互いに打ち消す働きがある。
そしてこの反応では最適なpHがある。
後の残りの時間で後片付けをして終了しました。

■ブロッコリーからDNAを取り出す■

10月3日
さて、今日は前回まで酵素についてやってきた。
酵素はタンパク質。
タンパク質がさまざまな働きをすることで生物は活動する。
ではその「タンパク質はどのようにして作られるのだろうか」
これはタンパク質を作る遺伝子による。
タンパク質は分解されると20種類のアミノ酸になるから 20種類のアミノ酸の並び方を遺伝子は決めてくれればいい。
その遺伝子とは何からできているか。これはDNAという物質 からできているということがわかった。
今日は、そのDNAについて詳しく見てみよう。
DNAはATGCという4つの塩基からできている。
しかし、4つの塩基でどうやって遺伝子を作るのか。
これを考えるのに、ATGCを音に当てはめて考えたDNA MUSIC というのを持ってきた。
A T G Cがそれぞれ一つずつの音に対応するとする。
すると 4つの音でしかない。
 パソコンで音を鳴らしてみる。
これだと足らない。そこで AA AT AG AC
というように二つで組み合わせて音を作ってみよう。
さっきより音が多くなった。16音になる。しかし、20種類には たりない。
そこで AAA AAT AAG AAC AAG
というように3つの組み合わせで音を作ってみよう。
今度は曲らしくなってきた。64音になるんだ。
この3つの組み合わせをコドンという。
さて、DNAがどのような構造をしているのか、今日は模型を作ってみよう。
(ペーパークラフトで模型を作る 所要時間は20分)
作ってわかるようにらせん構造。それも塩基が互いに対になっている。
この対のなり方は相補的な関係といい、AにはT GにはCと決まっている。
そして、これがらせんになっているということで二重らせん構造という。
(ここで1時間)
続いての時間はブロッコリーを使ったDNAを取り出す実験です。
この実験についてはさまざまな方法がインターネットにありますが 私は次の方法を使いました。
まず、ブロッコリーをそのまま凍らせる。
(これは凍らせることにより細胞内の水が凍り破壊させるためらしい)
そして凍ったブロッコリーをキッチンバサミで蕾の部分だけを乳鉢に入れる。
(蕾の部分がDNAが一番多く含まれている)
乳棒ですりつぶす(形が無くなるまで20分ぐらいかかります)
その間に200mlビーカーにビーカーの目盛りで50mlの蒸留水を取る。
食塩を5.9g溶かす。約10%食塩水=2mol/lの食塩水
食塩水の濃度に付いてはいろいろあります。飽和食塩水を用いているのもありますが あとでエタノールを加えたら食塩が出てしまうのでこれぐらいがいいと思います。
さらに台所用洗剤を1滴入れる。
これをDNA抽出液とします。
しかし、この抽出液では、食塩水に溶けやすいタンパク質も抽出されます。
また、加える洗剤は界面活性剤として細胞膜を破壊する働きを持たせるためだが 本当にその働きがあるのかはよく分かりません。
(収率があがるのは確からしい)
そして、この抽出液を乳鉢の中に入れて軽くまぜて10分放置
このときにまぜるとDNAが壊れてしまうらしいです。
この放置している時間を使って器具の洗浄とろ過の準備です。
学校にロウトがなかったので100円ショップの漏斗を使いましたが
このロウトのほうがいいようです。
そして、ろ紙の折り方を説明。
ろ液は試験管に集めることとしました。
10分経ったら、駒込ピペットを使って抽出液の上澄みをろ過する と指導したのですが結構、混濁していてなかなかろ過が出来ません。
そのため、5ml程度、ろ液が取れたところで終わりにしました。
最後に駒込ピペットを使って冷やしたエタノールを同量注ぐ。
このとき試験管のへきに伝わらせてゆっくりとという指導はしたのですが なぜか真ん中から一気に入れるところが多かった。
(二層に分離させるというのがよく理解できなかったようです。)
しかし、こんなに荒っぽい実験でしたが、レシピ通り、エタノールとろ液 の界面に白いもやっとしたものが出てきました。
このもやっとしたものがDNAだよということで後片付けをして終わりにしました。
この実験を通してDNAが取り出せるということに驚いた生徒は多かったです。
しかし、この実験はいんちきですよね。最後の白いもやっとしたもの はDNAもあるかもしれないけれど、食塩水に溶けてエタノールには不溶の タンパク質かもしれません。
今回の実験ではタンパク質を除去するという行程がありませんでした。
だから、この白いもやっとしたものを取り出して、タンパク質検出 の実験をしたらたぶん陽性だと思います。
ろ過が時間がかかるので、この白いもやっとしたものはなかなか 取り出しにくいです。
ろ過を簡便にするためにガーゼを使ったり、ティッシュを使ったりする 方法がありますが、それではただ単に有形物を取り除いているだけで 本当にろ過なのか疑問です。
教科書的にはトリプシンなどの酵素を使ってタンパク質を分解 または加熱変性させて除去というのトリのレバーを使ったときにはあります。 植物材料ということでタンパク質の含量は少ないとは思いますが これはごまかしだなと思いました。
今回の実験のポイント
 DNAを取り出す実験の注意(自分のDNAが入り込まないようにする これはこの開放系では難しいですね)

■テスト前■

10月10日
来週から中間考査が始まるので今日が考査前、最後の授業になります。
最初にブロッコリーからDNAを取り出す実験のまとめをしました。
(前回できなかったので)
ということで最初の1時間はテスト対策の時間にしました。
今までやってきたことの復習です。
・pHの話  pH12の液を100倍に薄めたらpHはいくつになる?
 とかいう話です。
 もちろん 酸をいくら薄めてもpH7以上にならない
 アルカリをいくら薄めてもpH7以下にはならない
 というのも補足です。
・酵素と無機触媒の違い
 カタラーゼの実験の話です。
・酵素の話2(ホタライト)
 ルシフェラーゼとルシフェリン
 基質特異性・最適pH・最適温度・失活など
二時間目はDNAの転写と翻訳をやりました。
コンピューターによるCGを講義室のテレビに映すために 今回、ダウンスキャンコンバーターを使いました。
画面が小さいのでわかりにくかったようです。
大きいディスプレーが欲しいなぁ・・・プロジェクター                   とかほしい
その後に転写と翻訳について説明。
転写はDNAの遺伝情報をGならC CならG TならAというように 読み取ること。このとき、Aに対応するのがUなのがポイント そして読み取ったもの・・・これを伝令RNAという。
これをタンパク質工場(リボソーム)に運び、この暗号に 対応する3つの塩基とアミノ酸をもった運搬RNAが結びつく。 最後に、この結びついている3つ塩基が切れる。
この説明ではわかりにくいから実際に転写と翻訳をやってみよう
ということで広島県の生物実験CD-ROMにある「たのしめるプリント」 を使って「ミヤマクワガタ」を作る。
なかなか転写が理解できなくて作るのに四苦八苦で 丸一時間かかりました

■パン酵母を用いた遺伝子組み換え実験■

10月30日
中間考査のあと、すぐ文化祭に入ってしまって 最初の授業なのですが、今後も授業が少ないので 濃縮させました。
まず、今までの流れから
10月12日の生物活用の時間の後に生徒に白衣を貸し出し 10月31日の実験までに各自洗ってくることということにしました。
10月23日 中間考査
10月24日 山口大学よりキットが届きました。
10月25日 朝からクリーンベンチの準備(UV殺菌)
       予備実験(YPD培地にパン酵母宿主培養)
10月26日 予備実験(遺伝子組み換え操作、最小培地での培養)
10月27日 観察(変化があまり見られない)
10月29日 組み換え体にコロニー形成
10月30日 明日の実験のために本番用に5枚YPD培地にてパン酵母培養
10月31日 8:00 UVランプをつける。
      10:00 恒温水槽で42度の温浴を作る。
      10:20 クリーンベンチのパイロット炎の調節
      10:40 テスト返却&解答配布
      10:45 テスト直し
      10:55 実験がはじまったらレベル1にするため
           実験室から出られないと説明。
            カルタヘナ法の説明(文科省の指針プリント配布)
           バイオハザードの話(日曜日に映画は放送されていました)
           組み換え実験で重要なこと(外へ持ち出さない)
      11:05 ベクター、宿主、マーカー遺伝子の説明
           生徒用マニュアルを使い(生徒各人に13ページのマニュ アルを配布)
      11:30 3つのクリーンベンチを用いてYPD培地からパン酵母を            かきだし、導入用に入れる。
           その後、DNAを入れる
           これを選択者全員(7人)行いました。
             時間の都合から対照実験はしませんでした。
      11:56 42度の温浴にて遺伝子導入を行わせる。
            ここまで、無菌操作をやって生徒は
           「こんなに手を洗ったこと無かった。」
           といわせるほどでした。
            この間に次の操作の説明
     12:16 湯浴から取り出し、最小培地に植える。
     12:28 全工程終了
       使用した器具類は次亜塩素酸ナトリウムの入った液につける。
       遺伝子組み換え培地は25度の培養室にいれる
このあと、昼休みになりました。
    13:20 総合実習(プラタナスの刈り込み)
    15:40 次亜塩素酸ナトリウムの入った液から取り出し、廃棄物にする。
次回の授業は11月7日です。予定はコロニーの測定とアミラーゼ活性の準備をし たい。
ちなみに今後の授業日程
11月7日 遺伝子組み換え2回目
11月14日 修学旅行代休のため授業はなし
11月21日 平常日課
11月28日 平常日課
12月   期末考査

■パン酵母を用いた遺伝子組換え実験2■

11月7日
先週、酵母菌へのベクター導入、そして最小培地で培養し 1週間後、今日は、できた組み換え体のコロニーの計測です。
そのまえにこの実験は難だったのかをもう一度振り返る
まず、最小培地で出てくるというのでなぜ遺伝子組み換え が起きたと分かるか。
酵母菌にもし人の遺伝子を導入したらどうなるか?
そして、この技術はどう応用できるか
というこれも生徒用マニュアルにある課題を考えました。
(約30分)
そして、このあとコロニー数の計測です。
今回の実験は導入の効率が良かったのか?
970〜13000と幅がありましたが多くの コロニーが計測できました(「平均は6000ぐらいです」)
この実験から続いて、アミラーゼの活性を調べる実験を行うために デンプン培地に 今できた酵母と組み換え前の酵母を一つのデンプン培地で培養して 調べる。
という意味がわからないらしく、次のような現象が起こりました。
1つめ
 2枚のデンプン培地にそれぞれを導入、その前を分けて入れようとした。
2つめ
 始めのYPD培地(導入前の酵母を培養した培地)に導入酵母を入れる、
このようなことは何をしているのか(対照実験という意味がわからなかったのかも しれません)
DNA導入に関して対照実験を今回、生徒実験として行ないませんでした。
(予備実験でやったものを生徒に見せるだけにしました。
  最後に生徒の感想です。
パン酵母を用いた遺伝子組み換え実験の感想
・遺伝子の実験は安全かつ理解を忘れずにやりました。
 コロニーを1個1個数えるのが難しかったです。
・すこし危険だったので緊張しました。
・とても面白かった。今後、バイオテクノロジーを導入  している高校でもやって欲しいと思う。
・コロニーが思ったより少なかった。初めて実験をして  失敗するかと思ったがちゃんとできてよかったです。
・思いのほか、実験はうまくいき、とても楽しかった。  これからの実験結果が楽しみである。
・菌を移動させるのが大変だった。
・今回のような実験はとても役に立ったと思います。  遺伝子を使った実験は初めてでとても緊張しました。  これからもこのような実験をしてみたいと思いました。
この実験は操作自体はそんなに難しくはないのです。
ただ、生徒には「無菌操作」「クリーンベンチでの作業の仕方」
など付属しているものが多かったので新鮮だったのではないでしょうか。
普通高校で生物室で行う実験ではどうなのかな?
とおもいます。何週もこのように引っ張る実験に生徒は飽きないか?

■パン酵母を用いた遺伝子組み換え実験3■

11月21日
11月7日に2時限目を行ってから、4日間、25度で培養し、 コロニーが結構大きくなっていました。
その後、5度のインキュベーターで冷蔵して静菌 させておいたものを今日使いました。
まずは、今日の話題から
iPS細胞の話
 これは今日の読売新聞に載っていた話題
iPSと板書し、これは何か?
生徒「液晶テレビにあるよね」
そう、一秒間当たりどれだけデータを送れるかとか
液晶ディスプレーの方式にIPSというのがあるが
小文字のiPSというのがポイント
これは日本で京都大学が始めた研究で 誘導多機能性幹細胞の略で始まったのが
ES細胞と同じように万能細胞になった ことを今日、アメリカの科学誌「セル」(電子版) に発表した「人工多能性幹細胞」と命名した。
このiPS細胞のつくりかたが今までやってきた遺伝子 組み換えと同じ方法だ。
皮膚の細胞に4つの遺伝子をもったベクターを入れる というもの。
新しい技術ということで関心が高まっている。
ということでこの話題をした後に
アミラーゼの話
 もしアミラーゼが無かったらどうなるだろう?
  でんぷんが分解できない。
さて、胃腸薬のアミラーゼはどうやって作るか。
 実はこれは、日本人最初のアメリカンドリームで明治時代に 高峰譲吉によって アスペルギルス オリザというカビから 大量生産した。ところでこのカビはどんなカビか?
オリザと名前がつくのがポイント
 1年のときにオリザ サティバとかやったのを覚えているかな?
オリザはイネだったね。このカビは米と関係がある。
コウジカビだ。
 ということでここで「もやしもん」の話

そして、ここで、遺伝子組み換えによりアミラーゼ活性があるかどうか 調べる。
ヨウ素液をかけると
組み換え体の周りが染められないはずだ。
万が一生徒がうまくいかなくでもいいように昨日、培養を仕掛けたもの でそれを見せました。
生徒がやったものはどれも染まりません。
そうです。培養が長すぎて、アミラーゼがシャーレ全体に広がって しまったようです。
 染まらないということはアミラーゼ活性があることはわかるがもとの 酵母が活性がないということが確かめられませんでした。
最後に実験の後処理について殺菌して処理する説明
薬品による殺菌
・70%アルコール
・次亜塩素酸ナトリウム水溶液
熱処理
 オートクレーブ
ここで実験した培地類を回収し、オートクレーブにかけ 生徒は手を洗って一時間終了
2時間目
500mlペットボトルにお湯100mlを入れる。
そしてショ糖5gを溶かす。
市販のパン酵母5gを入れる。
ふたをする。
50度の湯浴に入れる
酵母はショ糖を栄養にしてアルコール と二酸化炭素を作る。
パンは二酸化炭素により膨らむ。
このアルコールは酒になる。
ここでその簡単な実験をやってみている。
酵母から盛んに泡が出ているのがわかる。
これが二酸化炭素
本当に二酸化炭素なのか。
二酸化炭素を吸収する水酸化ナトリウムを入れてみると わかる。
という説明をいろいろしてから、おもむろにパンパンになった ペットボトルを取り出し、ふたを開けてすばやく 水酸化ナトリウム10粒をいれ、ふたを閉じる しばらくするとペットボトルがへこむ。(これは演示)
酵母による反応ということで次はこんなのをやってみよう。
(生徒実験)
グルタミン酸ナトリウム(味の素)
メチレンブルー希釈液
10%酵母液
を使った脱水素酵素の実験です。酵母はいろんな酵素を 持っているというのを示す実験でした。
これで
遺伝子組換え・酵素反応のまとめができました。
今回、アミラーゼ活性は培養時間が長くやりすぎるとダメだということが わかりました。
 

■ プロトプラストの観察実験■

11月28日
 この実験キットは ブルーバックス 「入門 たのしい植物学」(田中修著) を参考に今年度初めて授業の中に取り入れた。
 キットは、酵素液をはじめとしてアスピレーター、コック、瓶などすべてが そろい、植物材料さえあればいつでも取りかかれるようにできており、すぐに 活用することができた。
 植物材料に関しても、キットの中のCD-ROMの動画を参考として用いることが でき、実験もスムーズに行うことができた。
 この実験は、「植物バイオテクノロジー」の時間の中で次のように実施した。
実施日  平成19年11月28日 3,4限目
実施生徒 植物バイオテクノロジー 選択履修者 7名
授業の進め方
 準備 この授業を予告し、観察したい植物を各自持参するよう指導した。
 導入 細胞融合技術によって多くの野菜などが作られている
 発展 プロトプラストの作成法と細胞融合技術についての説明
    この実験キットの説明
 この後、実験に取りかかった。
 まず、各自準備してきた植物を用いて切片を作成した。このときの時間が とてもかかり、ここまでで1時間の授業を終えるほどだった。
この後、すべての生徒が酵素液に入れたところで減圧させた。
 アスピレーターの説明とこの実験の意味を説明しながら行った。
 この操作の中で突沸が起きやすく中の試料が飛び出るということが何度か あり、そのたびに中断し、ピンセットを使い試料を戻すということを繰り返 した。このことで時間がかかった。
 このあと、恒温湯浴で暖めた。(30℃〜42.5℃)
 生徒に各自顕微鏡を準備させた。その間、時間を計り、サンプルを3分ず つ振り混ぜた。
 時間が足りなくなり始めたのでお湯の中での反応を20分とした。
 そして、5分静置している間に、プロトプラストをスライドガラスにとる ときの注意を行った。
 5分後、各自、スポイトで吸い取り検鏡した。本校には「パスツールピペ ット」がなかったのでスポイトで代用した。(スポイトでも十分採取できた が、パスツールピペットの方がよいのだろうか?)
 今の季節、生徒に試料を用意させたところミカンとユズが多く、ほとんど が黄色のサンプルになった。アロエを持ってきた生徒がいたので緑の試料が 一つできた。
 生徒が準備するもののほかに教師側で紫キャベツ、キャベツ、ニンジンを 用意した。ニンジンは前日に予備実験を行ったところ無色のプロトプラスト が得られたが色がないのは味気ないので本実験には用いなかった。
 教師側で演示で実験するときに紫キャベツとキャベツを用いて実験を 行った。
ミカンを用いたところ、多くは無色のプロトプラストが得られた。 (探せば黄色もあった)
 アロエは緑色のものが得られた。
後片付けの時間を入れるとぎりぎりの時間になってしまったので多くの生徒 はこの観察だけで実験を終わりにさせ後片付けをさせた。
一人だけ早くすすんだ生徒がいたので、アロエ、キャベツ、紫キャベツの合 わさったプロトプラストにPEGを加えて、実験を続行させた。
そして、この結果を他の生徒が見るという形で授業を終わりにした。
 この実験ではPEGを加えた後、融合が行われるが、乾燥するのも早く完全 に一つの細胞にまでなるところまでは観察できなかった。
以上の授業結果からいえること
1 試料を3mmにきるときにはキャベツなど表皮をそのまま使えるものの方 が時間がかからない。(柑橘類やアロエでは色素細胞だけとるというのに時 間がかかった。)
2 突沸を防ぐ方法を考えながら減圧をしなくてはいけない
3 顕微鏡などの操作技術は身につけていなければこの実験はできない。
4 二種類のプロトプラストを別々に作成すると混合するのに時間がかかり、   細胞融合までいくのが難しい。
 実験のフローチャートを板書で説明したが、パワーポイントなどで実験 の流れを示したものが付属のCD-ROMにあれば操作はしやすかったと思う。
動画もいいが、動画では所々で止めなくてはいけなくて面倒である。
【全体を通しての感想】
 いろいろな問題点はあるが簡便な方法でしかも効率よく安価で プロトプラストが単離でき、しかも細胞融合まで生徒の手でできる 本キットをもちいて細胞融合技術の授業を有意義なものにすることができた。
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